社長のEcoコラム

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15.「所有」から「利用」へ

前回のコラムでは、factor 4の実現のためには、いろいろな機器やプロセスを省エネ・省資源化することや、3Rを徹底することが必要であり、さらに、「モノを所有する」ことが当たり前という時代から、必要なときだけ「サービスを利用する」という方向へ移行するという方向性が、資源生産性の劇的な向上をもたらす可能性があることを述べました。

今回は、この「モノの所有」から「サービスの利用」へという転換についてもう少し述べたいと思います。

● 「モノの所有」から「サービスの利用」へ

「モノの所有」から「サービスの利用」へというのは、より具体的にいうと次のような2つの側面があります。

(1)所有から共有やレンタルへ
ユーザの視点で見ると、お金を払って自分のものとして100%所有するのではなく、共有やレンタルによって使った分(あるいは使う権利分)だけお金を払うという方式に変えていくことです。
(2)メーカーからサービス提供者へ
モノを作って、そのモノ自体を買って、もらってその代金をもらうというメーカーという立場から、そのモノをユーザが使って実現したいサービスや機能を提供し、そのサービスや機能の代金としてお金をもらう。

これらの2つは、同じことをユーザ側と提供者側の2つの視点で見たときの変化で、同じことを言っています。

● 「モノの所有」から「サービスの利用」への具体例

自家用車 → カーレンタル・カーシェア

自家用車のほとんどは、1日の内に1時間とか2時間とかしか実際に運転されていない場合が多いと思います。つまり、1日24時間のうち、90%はただ単に駐車場に止まっているのです。駐車場に止めておくために車を買ったといってもいいような状態です。しかも駐車スペースの確保のためにお金を払っているわけです。このような使い方は、自動車というたくさんの資源を使ってつくられるモノにとってあまりにももったいない使い方ではないでしょうか?

このムダを劇的に少なくする可能性を秘めたサービスがカーレンタルやカーシェアリングというものです。どちらも必要な時だけ料金を払って自動車を利用するためのサービスです。この2つの違いは、レンタカーが不特定多数が利用するサービスであり、カーシェアリング予め登録した会員だけが利用できるサービスである点です。

いずれにしても、自動車を所有する形態から、自動車を必要なときだけ費用を払って利用するという形態にすることにより、自動車全体の数が減り、さらに利用のつど費用が発生するので、鉄道、バス等とのコスト比較意識が働き、過剰な自動車の利用を抑制するなどの効果により、利用者のコスト負担が少なくなると同時に、資源のムダな消費が劇的に減る方向につながる可能性があります。

冷暖房設備を売る → 暖かさ涼しさ提供サービス

冷暖房設備を購入する顧客が求めているのは、実は、冷暖房の設備ではなく、「涼しさ」や「暖かさ」そのものです。機械が欲しくて買っているわけではありません。そのように考えると、冷暖房設備を売るというビジネスの代わりに、「涼しさ」や「暖かさ」の提供サービスというビジネスが浮かび上がってきます。では、「涼しさ」や「暖かさ」を提供して、それに対して料金をもらうというビジネスにした場合、資源生産性にどのような影響が生ずるでしょうか?

設備を売ることをビジネスにしている限りは、できるだけたくさんの機械を設置してもらおうとします。しかし、サービスに対して料金をもらうビジネスにおいては、できるだけ少ない設備で、できるだけ少ないランニングコストで、つまりできるだけ電力を使わずに、「涼しさ」や「暖かさ」を提供できるように努力することになります。つまり、設備業者自身が、ムダな設備や電力を徹底的になくそうと努力することになり、ひいては、資源のムダな消費が減る方向につながっていくわけです。さらに、今まで冷暖房設備業者であった企業が、建物の断熱や発熱の少ない照明への取替えなど、「涼しさ」や「暖かさ」を提供するためのビジネスの範囲を拡大していく発想にもつながって行きます。

実際に、世界的な空調機器メーカーであるアメリカのキャリア社などは、このような「涼しさ提供サービス」事業に乗り出しているようです。

その他の例

ダウ・ケミカル社などは、「有機溶剤を売る」というビジネスではなく、「有機溶剤をリースして、使った後回収するサービス」を提供しています。実は、誰も有機溶剤を所有したいとは思っていないでしょう。ユーザーとしては、使った後回収してくれるのであればありがたいであろうし、ダウ・ケミカル社としては、回収したものを再利用できるわけです。

アメリカ・アトランタにあるインターフェイス社は、「カーペット販売」から「床をタイルカーペットで覆うというサービス」事業への転換を図りました。カーペットは同社が所有し、清掃やメンテナンスを引き受け、顧客はその対価として月々の料金を払うようになっているようです。タイル状のカーペットの傷み具合を毎月調べ、基準より擦り切れているものだけ交換する。そして擦り切れたタイルカーペットは再利用して、新しいタイルカーペットを作っています。これによりカーペットの交換量も必要最小限になり、さらに交換したものも再利用するということで、大きな資源生産性の向上を達成しています。

ここまで述べてきた例と同様に、モノを売っているビジネスというものは、発想を転換すれば、ほとんどすべて、サービス提供ビジネスに転換することが可能ではないかと思われます。そしてそのような転換によって、資源のムダ使いがなくなり、資源生産性が全体として飛躍的に向上することが期待できるのではないかと考えます。

次回のコラムでは、松井製作所のビジネスとfactor4の関係について述べたいと思います。

2009年06月15日 松井 宏信


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