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成形工場のfactor4を目指して

プラスチック成形品の黄変を防ぐ方法とは?

2022.12.26

プラスチック成形品の黄変とはなにか

プラスチックの黄変とは、文字通り、プラスチックの成形品が黄色に変色してしまうことを言います。
皆さんは、自動車のヘッドライトや、スマホのケースなどプラスチック製のカバーなどが経年により黄ばんでいる状態を見たことはないでしょうか? まさにこの黄ばみが、黄変の身近な例となります。

黄変    ←   新品時

この黄変はいったいどのようなメカニズムで発生するのでしょうか。
まず、プラスチックは熱と酸素、水分、紫外線の影響を受けて分子構造が変化し、材料特性の変化や変色が生じます。これを「プラスチックの劣化」と言い、熱と酸素によって起こる劣化を特に「熱劣化」と呼びます。

熱劣化によってプラスチックの分子が熱の影響を受けると、空気中の酸素と反応して過酸化物となり、この反応の中で発色団(変色の原因となる分子構造)が生まれます。これによって、プラスチックに黄変などの変色が発生するのです。

黄変の要因である熱と酸素は、我々の身の回りのどこにでも存在します。すなわち、すべてのプラスチック製品が熱劣化の影響を受ける可能性あり、黄変はプラスチック成形と切っても切れない課題となっています。

なぜ成形工程で黄変が発生するのか?

成形工程においても、黄変は起こり得る現象です。
通常プラスチック材料には、成形時の高温によって劣化しないよう酸化防止剤が加えられています。しかし、酸化防止剤によって完全に変色を抑えられるわけではないため、変色の判定基準が厳しい透明精密成形品(レンズ等)では不良品と見なされるケースもあります。

また、乾燥時の環境によっても黄変のリスクは高まります。材料の乾燥温度が高すぎる、時間が長すぎるといった過度の乾燥によって、黄変が進みやすくなります。

プラスチックの黄変を防ぐ方法とは?

それでは、乾燥から成形直前までの行程で効果のある、黄変を抑えるいくつかのソリューションをご紹介します。

適正乾燥を実現

成形工場では成形機や乾燥機が常に稼働しており、材料の乾燥状態を手動ですべて適切な状態に管理・コントロールすることはとても難しく、手間がかかります。

iplas 機能を搭載した除湿熱風乾燥機 MJ6-i であれば、成形機の樹脂使用量に合わせて乾燥風量を最適な状態にコントロールするので、自動運転での適正乾燥が可能となり、省エネにも繋がります。

最適な乾燥状態の樹脂原料を成形機へ供給することで、成形品に黄変が起きにくくなる効果が期待できます。

乾燥温度を低く抑える

樹脂原料の熱劣化は、長時間高い温度にさらされるほど早く進行してしまいます。その点、できるだけ温度を上げずに、短時間で樹脂を乾燥できると良いわけです。

真空下であれば水の沸点が下がるため、低温で水分を蒸発させることができます。

この考えを元に開発されたのが、真空伝熱乾燥 DPD3.1 です。この真空伝熱方式により、樹脂を低温で乾燥させることで熱の影響を抑制し、成形品の黄変を防止します。

酸素自体を減らす(窒素置換)

樹脂の熱劣化は熱だけではなく、熱と空気中の酸素の相互作用によって引き起こされます。
そこで効果的なのが窒素乾燥機です。この乾燥機では、乾燥環境と樹脂内の酸素(O2)を窒素(N2)に置換することで、乾燥時の樹脂の酸化を防ぎます。

また、小型伝熱乾燥機と窒素発生装置の併用という手もあります。成形機上に小型乾燥機を設置し、成形直前で内部に窒素を直接噴射することで酸素を遮断、樹脂の分子が酸素と反応することを防ぎ、成形品の黄変を抑制します。

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既存機を活かした窒素置換乾燥

「新しい乾燥機を導入したくても、費用面や、既存機が無駄になる、置き場所がない」などの課題を抱えていらっしゃる成形工場の方も多いかと思います。そのような場合には、既存の除湿乾燥機と合わせて使用可能な窒素供給機と、成形機上に設置できる N2P 捕集器を導入する方法もあります。成形機上の材料投入口で温度をコントロールした高濃度窒素を供給することで、樹脂の温度変化・酸化を防ぎます。これによって成形品の黄変を抑制することが可能です。

まとめ

プラスチック成形品の黄変を防止するには、熱劣化・酸化のメカニズムを知り、適正にアプローチすることが重要となります。このコラムでは成形の入り口となる樹脂原料の適正乾燥についてご紹介しました。樹脂を適正な乾燥状態で成形機へ供給する事は、黄変だけでなく、黒点や焼けなどの成形不良対策にも有効となります。

樹脂原料の種類や成形品に求められる品質のレベル、それぞれの成形工場の状況に合った方法で対策を実施することが問題解決の鍵となります。松井製作所はさまざまなソリューションをご用意しております。ぜひお気軽にご相談ください。

CX デザイン部 飯島 泰彦