揚程で変わる冷却の質-金型温調で圧力が必要な場面とは
金型温度調節機においては、冷却や加熱の効率を高めるために「流量(L/min)」が重視される場面が多くあります。流量を多く確保することで、冷却水や熱媒を金型に大量に供給し、効率よく熱を奪えるためです。特に冷却効率が製品の品質やサイクルタイムの短縮に直結する成形条件では、大流量の確保が重要です。

流量が特に重視される使用例としては、“ポリプロピレン(PP)”や“ポリスチレン(PS)”を用いた成形が挙げられます。
これらの汎用樹脂による高速成形では、短時間での冷却が求められるため、温調媒体を大量に供給できる大流量の温調が効果的です。


一方で、成形条件や金型構造、使用する樹脂によっては、流量そのものよりも「圧力(揚程)」が重視されるケースもあります。配管抵抗が大きい場合や、冷却回路が複雑な場合、十分な圧力で媒体を押し出さなければ、回路の末端まで流体が行き届かず、結果として冷却不良が発生する恐れがあります。
このような状況では、金型温度調節機に高い揚程性能が求められます。圧力が不足することで、たとえポンプが高い流量を出力していても、流体は回路に入らず、冷却されない箇所が生じてしまいます。その結果、製品の反り・ヒケ・白化・ガス焼けなどの不良を引き起こすリスクは高まります。

圧力(揚程)が特に重視される使用例としては、“ポリアセタール(POM)”や“ポリアミド(PA)”を用いた成形が挙げられます。
これらの結晶性樹脂では、温度管理が成形品の品質に大きく影響するため、冷却回路は複雑で長尺になる傾向があります。そのため、媒体を確実に押し出すための高圧力な温調が不可欠です。


したがって、金型や製品設計、使用する樹脂の特性に応じて、流量と圧力のバランスを見極めた金型温度調節機の選定が重要になります。
カナオンに新たな金型温度調節機MC6-SPが登場!
製品ラインナップ
MC6-SPは、成形条件に応じて異なる流量の3タイプをラインナップ。
特に小型精密成形などで求められる「小流量かつ高圧力」の両立に対応し、金型内の水管形状に応じて、最適な金型温度コントロールをお選びいただけます。
マツイの新たなソリューションとして、皆様のプラスチック成形に貢献してまいります。

特長
1.低流量でも妥協しない、高圧力温調。
MC6-SPはカスケードポンプを採用し、小流量でも安定した圧力で温調媒体を供給します。
特に、水管が細く配管抵抗の高い小型金型や、水管が複雑に入り組んだ多数個取りの金型といった、冷却条件の厳しい成形において、媒体を回路の隅々まで確実に押し出し、温度ムラを抑制。成形品の品質安定やサイクルタイムの最適化を実現します。

渦流タービンインペラーを採用しており、少ない流量でもしっかりと圧力をかけ、安定した水流を効率的に供給します。



2.データ連携も、遠隔監視も適える多様な通信機能。
MC6-SPは、標準仕様でシリアル通信(RS-422A/485)に対応した制御パネルを搭載しており、一般的な標準プロトコルを通じて、成形機からの制御信号の送受信や動作状況の確認が可能です。これにより、装置の動作を成形機側から一元管理することができ、品質管理や工程管理の効率化につながります。
さらにオプションにて、OPC-UAに対応した制御パネルも選択可能です。遠隔地からリアルタイムで稼働データの監視が行えるようになり、管理業務の負担軽減やタイムリーな対応を支援します。

SPI、MODBUS通信にも対応しており、設定項目の変更などを集中管理することが可能です。

3.フランジ構造採用で、止水性と作業性を強化。
接続部にはフランジ構造を採用し、作業時の取り外しや再接続がスムーズに行える設計にしました。密閉性に優れたフランジ構造に加え、内部構造も見直したことで、水回りの作業における負担軽減と、水漏れリスクのさらなる低減を実現しています。
メンテナンス性の要「フランジ構造」のしくみ
フランジ構造とは、部品の接続部分に“つば”のような平らな板状の突起を設け、ボトルなどでしっかりと締結する構造を指します。
この構造を用いることで、配管同士を確実に固定できるだけでなく、分解や再組み立てがしやすく、メンテナンス性にも優れています。
また、接続面にパッキンを挟み込むことで、高い密閉性(止水性)を確保できるのも大きな特長です。機械装置や配管設備の接続部に広く採用されており、繰り返しの点検や部品交換が必要な現場で多く利用されています。
